sametimeme's diary

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ビジネス英語の勘違い

海外でビジネスを経験して思う事に、英語を使うことの難しさ、がある。何をいまさらと思うかもしれないが、英語を使うという事は英語しか通じない相手と会話するという事が殆どで、かつ、その場で合意なり反意なり結論なりを残さないといけないような場合だったりする。それが、とてもとても難しいのだ。


英語を使うことの難しさ、と僕は書いた。これは英語を聴くことの難しさでもなく、英語を喋ることの難しさでもなく、英語を使うこと、の難しさだ。英語をただ話す事と使う事の間には、とても大きなギャップがある。英語をただ聴くこと、単語や文章を理解し記憶する事と英語を使う事の間には、やはりとてもとても大きなギャップがある。

海外ビジネスでどんどん結果を残すような人、人種を超えて尊敬されフォローされる人たちというのは、必ずしも英語が上手であったり、文法的に正しい英語を喋ったりする事を必要としない。彼らに必要なのは金を稼ぐ事であったり仲間を増やす事であったり、プロジェクトを完遂させる事、である。たどたどしく、文法的に誤りだらけの英語であってもそれが出来る人は出来るし、逆に言うとアメリカで15年過ごしたネイティブ・スピーカーであっても、そのほとんどの人は同じ成果を残すことはできない。

日本の例でいうと、TOEICの点が高ければ英語でビジネスを遂行できる、という勘違いがある。TOEICはとても優秀で効果的な試験だが、あくまで英語の読み聞きを測る試験であって、ビジネス英語力を測るものではない。

絶対的に正しい、明らかな、必要十分なビジネス英語の要件。

それは、『相手の意図をできる限り正確に汲み取る。自分の意図を相手ができる限り正確に汲み取れるように話す』この2点に尽きる。

あくまで、ビジネス英語というのは相手の理解を促すためのツールでしかない。

雨が降り汚い泥水の水たまりを歩く時に、長靴を履いて濡れないように歩くが、ビジネス英語は、この長靴の役割に近い。華美である必要はないし、伝統的な高級品である必要もない。ただただ、脚を汚さず歩かせる。その目的を果たすものなら、安い合成ゴムの粗悪な量産品で十分なのだ。相手に自分の意図した事を正確に伝える、そのためなら、うさんくさい発音でも、バラバラな文法でも、最高の仕事をしてくれるツールなのだ。

上の2点を意識してビジネス英語を話す人は、実際よく仕事ができるし、信頼を集める。意識するとは、念頭において考え行動に反映させる事を言う。例えば、相手が理解してないようであれば、発音やイントネーション、速度、時には表現や単語さえコロコロと変えて5回、10回と試し、相手が理解出来ていることを鋭い嗅覚で察知し、理解できるやり方に話し方をガラッと変える。
相手の発音や文法が無茶苦茶で内容が理解できない時は、そっと近くに寄り添い、頭の高さをあわせ、じっと目を見ながら、相手がどう伝えようとしているのか、特に何を伝えたいのか、自分の理解をどの程度推測してくれているのか、それらを見極めながら、慎重に相槌や時には訝しげな表情を浮かべ…、あの手この手で相手の表現の幅を広げる。分かり合えたと思ったらそれを言葉で確認し、根気よく話してくれた相手に感謝を伝え、笑顔で気持ちを表現する。

ある知り合いの金融コンサルタントで、英語のネイティブスピーカーの人が要る。一流大学大学院、一流企業のコンサルタントとアメリカでキャリアを積み、とあるアサインでアジアビジネスを手がけることになった。

彼とミーティングしたときに、本当に驚いた。まるで、初老の日本人がなんとか苦学しながら身につけたような発音の英語を話すのだ。ひらがなで書くような英語、中学生が授業で喋ると怒られるような棒読みの英語。これ通じてるのか?と一瞬考えたが、相手を見るとうんうんと熱心に頷き、積極的に質問などの発言をしている。相手はあまりに熱が入り少し早口の英語になっていたが、アメリカの英語に慣れ親しんだ彼には当然ながら問題なく理解できるので、相手の発言を踏まえて都度都度会議の速度感や方向性を調整する。

後から聞くと、アジアではああいう英語を話すように務めているとの事だった。アジアでブリティッシュ・イングリッシュや、アメリカン・イングリッシュを喋っても通じない事を、彼はよく理解していた。意外に思われるかもしれないが、こういった英語は、非ネイティブ圏では通じないどころか、嫌な印象を与えることさえある。それを十二分に理解しているからこそ、わざと下手な英語を話すようにしているのだった。

余談だが、彼は国際金融の分野、特に大企業の資金運用について本を書いており、出版されたものの一部を読んだことがあるが、英語力は本当にNativeと遜色なく、勉強させて頂いた。

ビジネス英語で必要とされる2つの要素は、日常の日本語の会話でも常に必要とされる要素と全く変わらない。それが何故か、英語となると発音や文法の美しさがクローズアップされ、基本の2点が疎かになる傾向がある。

英語で仕事をする人達に、声を大にして言いたい。文法など適当で良い。アクセントの場所など覚えなくて良い。ただ、多種多様な常識や文化的背景をもつ相手の理解に努め、その相手に自分を理解させる事に努める事が基本であり、最も重要な事だ、と。

会話でそれが無理だと思ったら、筆談でもよい。それくらいの徹底意識を持たないと、ビジネスチャンスはロスし、信頼は損なう。ビジネス英語と英語は、似てはいるが全く非なるものである。