sametimeme's diary

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世はなべてインサイダー

日立の社員が刑事告訴されたらしい。まあ元気なこった。

国会図書館が日立社員2人を刑事告発、内部情報を不正取得し入札妨害

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140616/564425/

 

 

この事件、簡単に言えば仕事で管理していた顧客の機密データにアクセスし、自分の会社の利益のために欲しがる人に分け与えていたITエンジニアが、バレて懲らしめられてしまった…というものだ。

彼は、会社のため、会社の仲間達のため、倫理を見失い自らが危険を犯してつかの間の英雄、そして犯罪者となった。記事を読むと結構組織的に関わっていたようなので、続報が気にかかる所だ。この手の事件はおそらく担当部長・役員レベルの責任問題となるだろう。

日立、という企業グループ。

この会社はあまりに巨大なため事業部ごとの会社をはじめ子会社・孫会社・関連会社が星の数ほど存在している。僕は仕事でいくつかの日立系列の会社と関わったことがあるが、他の電機メーカーに比べ、この会社は個人の裁量が大きいと感じた。言い換えると、統制が弱い(あえて弱めている?)のだ。

そのため優秀な人といい仕事をしようと思えばできるし、一回目のミーティングでもういいから帰って二度と来ないでくれ、とお願いした人もいる。ブレ幅が大きく割りと好き勝手をする、個人的にはおもしろいと感じるタイプの人が多い。

その特性が非常に悪く現れたのがこの事件だ、という事だろう。公共プロジェクトで長年やっていたら、顧客とも慣れ合いになるしガバナンスもおろそかになるだろう。この件も、社内では当然ながら警告をしていた人もいるであろうが、どちらかというとそういう人は組織からは邪魔者扱いされてしまうのである。

良くあるしほぼ明るみにならない

この物語の結末は刑事告訴という非常にかっこ悪い形となったわけだが、同じようなケースは無数に存在するし、それらのほぼ全てはこのように発覚することなど無い。どこにでもある聞いたような話なのである。

メーカーの営業としては、こういうインサイダー情報というのは営業冥利に尽きるものである。なにせ、自分が商談に入るから顧客の事情が手に取るようにわかるのである。入れ食いもいいところで、顧客のキーマンを抑えにかかって大口・長期受注などとなれば社内では英雄、ヘッドハンターから引く手あまたと相成る。

僕は金融業界や公共事業のシステム事情に詳しいと自負しているが、僕が目にしてきただけでも似たようなケースはゴマンとある。信じられないかもしれないが、そういった業界と取引を行う企業の中には、顧客が確実に自分たちから買ってくれると確信を持ち、その契約書を営業員が勝手に作成し、勝手に作った判を持ちだして捺印するという行為も存在していた。

なんのため?

会社の為に決まっている。もちろん、彼らは自分の成績を少しでも上げるためだと言うだろうが、成績を上げるというのは会社のためと同義である。彼らは営業として文句なしの超優秀なサラリーマンであったが、会社からすればヤクザが鉄砲玉を抱えるが如く、特攻隊員のように使っていた節がある。

余談ではあるが、上記のセルフ契約書の習慣はふとした事から営業部以外の常務の知るところになり、早急に隠蔽措置、そして再発防止策が取られたと聞いた。当然部長レベルの首が数本飛んだ。汚れ仕事の後始末も役員の重要な役目である。また、昨年、メガバンクがそれに失敗しトップが国にすげ替えられたという椿事も記憶に新しい。

清濁

法律の世界とビジネスの世界、それぞれからお互いを眺めてみれば、常識は非常識であって非常識が常識である。当件はたまたま法のもとの常識に照らしあわせて明るみになった事件ではあるが、この裏には数千件もの同じようなケース、いや、もっと悪質なケースが潜んでいると僕は断言できる。ただし、その全てが絶対悪という訳でもないし、忌避すべきものでないと僕は考える。

僕は決して犯罪行為を推奨するものではない。

だが、水清ければ魚棲まずと言って、清濁併せ呑む度量もまたビジネスには必要である。よくこういう問題案件を『捌く』という言い方をする事があるが、優秀な企業戦士というものは、数多の案件を捌き、修羅場をくぐって組織の中でのぼっていくのである。

縁あって大銀行の役員と親しくさせて頂いていた事があるが、酒の席で興が乗ると、ひそひそ声できわどい話を聞かせてくれたものである。銀行役員まで上り詰めるという人は、それなりにドラマチックなストーリーをいくつも背負っている。

僕は大いに楽しんだ。

ひょっとすると全てが冗談だったかもしれないし、そうでなかったのかもしれないが、そういうのは問題ではない。昨年、半沢直樹が大人気ドラマとなり銀行内部のこういったドロドロとした部分がにわかに注目されたようだが、ドラマとはまた違ったグロテスクさと、拍子抜けするくらいのあっけなさが現実のストーリーには存在している。他人ごとであれば、ひとつの喜劇を聞いているようなものだ。

僕の同世代の仲間たちは、まさに今、喜劇の中心で真剣勝負を仕掛けているようなサラリーマンがたくさんいる。僕は彼らの事を心底応援するものであり、少しでも多くのストーリーを創りだして言ってほしいと願う。

悲しき、そして勇ましきサラリーマン達に幸あれ。