sametimeme's diary

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手を動かした事ありますか?

仕事を話す時によく出てくる言葉に、『手を動かす』というものがある。この言葉の意味するものは、字面通り手を動かしてどうこうするというものではなく、当然ながら、「実務を行う」という表現の符丁のようなものだ。

どんな仕事をしていても、手を動かせるかどうか、というのはとても重要な要素だ。

上流の職種でも手は動かせるべき

若い人に人気の職種に、コンサルタントや企画職がある。こういった職業は、主にチームマネジメントやドキュメントライティングの能力、また指導力や発想力が重要となってくる職種で、手を動かすよりかは頭と口を動かすといった職種である。

泥臭く手を動かすより、頭と口を動かして他人に手を動かさせるほうが、優雅とか、上流とか、ホワイトカラーとか、カッコイイとか、そういうイメージに繋がるのだろう。実際、こういった職種(便宜上、上流職と呼ぶ)の責任は重大である。また、責任に比して権限もえてして重大なものである。年上の各担当者に支持を出しプロジェクトとしての成果を追求するのは、楽しいものである。

が、こういった上流職をこなすうえでとても重要なのが、手を動かせるかどうか?という事だ。

社内外のチームや専門部隊を統括するような仕事というのは、イメージ力がとてもとても重要になってくる。どのくらい大事かというと、蝶の羽ばたきがハリケーンになる…とか風が吹けば桶屋が儲かる…とか、そういうレベルでほんのすこしの事象や手がかりから、想像力をフルに働かせていろいろなシーンを頭に浮かべられるようにならないと、リスク管理やタスク管理、スケジュール管理が後手後手になってしまい、最終的な成果に繋げられなくなる。

どのチームのどの担当者が、どの作業をどういう風にしたら全体にどう影響するのか…と、非常に細かい点にまで気を配り、未来を予測する。こういうのは、実際にその作業を自分がやった事がないと、到底不可能なものだ。一つの動作は無数の影響を生み出すし、しかもそれは誰から見るかによって重要度も緊急性も変わってくる。できるだけいろいろな立場で、専門的な作業をできるという事実が、上流職にとっては大きな武器となるのである。

手を動かせるとスピード感・効率性が上がる

他にも、理由がある。手を動かせたほうが、話が早いのだ。

たとえばソフトウェア企業であれば、企画職がある程度プログラミングができるとしたら、新たに企画した商品のプロトタイプやデモを表面的であっても、実際に動かしてみる事ができる。そこからフィードバックや改善点を追求していくという手もあるし、最近はプロトタイプレベルから段階的に公開・販売するというスタートアップ手順もメジャーになってきた。

どうせ専門職が時間をかけてブラッシュアップしても、その方向性がずれていたらブラッシュアップの時間とその後の軌道修正にかかるコスト、時間はドブに捨てるのと同じである。であるなら、専門職に手渡す前にある程度上流で方向性を確認しておき、専門職に渡る段階では資源を集中投下するという事が可能になるのである。

高い現場力を備えた経営者

僕は海外に出てから起業家と多く接するようになったが、順調に会社を経営しているトップというのは、たいていは高い現場力を兼ね備えている。

僕と同い年で親しくしている日本人で、日本や東南アジアで複数店舗を抱え絶好調のある総合飲食企業のトップがいる。彼は若いころに日本酒のバイヤーとして日本とアメリカを往復し商談に奔走しつつ、日本中の酒蔵をめぐり仕入れや販売、製法に至るまで議論と交渉を重ねたという。

彼は元から起業を目論んでおり、あえて小さな食品商社に入社した。そして、そこでの仕事を通じて日本や海外ではどのような酒がどのように好まれ、どのような料理と組み合わされてどれくらいお金を使ってもらえるものなのか…など、勉強に加えて文章や言葉では表せられない暗黙知を実際に現場で身体に染み付かせ、予定通りにサラリーマン生活を終えて起業を果たした。超レッドオーシャンとも言うべき飲食市場で勝ち上がってこれたのは、間違いなく、彼の現場力の賜物である。

ITでも食品でも金融でも、現場力、すなわち手を動かす能力は絶対的に重要なものなのだ。だからきっと、医療や教育や物流やエンターテイメントでも、現場力はとても大事なものなのだろうなと考えている。

手を動かせそうな人、動かせなさそうな人

若い起業家や、起業家志向の学生と会話をするとき、僕のように現場で長い間働いてきて、かついろいろな現場を踏んできた人間というのは相手が現場力があるかどうか、手を動かせるかどうかというのはなんとなく匂いでわかるものである。相手が手を動かせないようなら全く魅力を感じないし、逆に、若いのにそんな事までやってたのか?みたいにビビらされるような具体的な現場の話を聞かされたりすると、きっと経営も付き合いもしぶとくやって行くのだろうな、と楽しみになってくる。

何より、口だけが立って頭がいい人間というのは、なんとなく、癇に障るのである。共感ができない。言い換えると、警戒感さえ覚えかねない。小手先や口先が達者でも良い仕事はできるものだが、スゴイ仕事というのは絶対にできないと僕は断言したい。凄みというのは、口からにじみ出るものではなく、身体からにじみ出るものである

支えとしよう

手を動かすという経験は辛いし、退屈だったりするし、単調だし、時には嫌で嫌でたまらないものである。だが、頑張って自分で体を動かした経験をした人ほど、人間の深み、凄みというのを備える。新しい道に進んだとしても、かならずその経験で培われた現場力というのは自分を助けてくれるものだ。これも、断言してよい。

頑張って手を動かした経験は、絶対に無駄になるものではない。転んだ時に、人は手をつくことで危険を回避する。苦労した手は、同じように危機やチャンスであなたを支えてくれる事だろう。もしこれを読んでいるのが若者で、退屈な現場仕事に飽き飽きしてるとしてもそう言い聞かせてもうちょい粘って頑張ってほしい。もしこれを読んでいるのがキャリアの途上で自信を失っている同世代の仲間ならば、自分の経験を信じて自信を取り戻してほしい。