sametimeme's diary

ブログのタイトルなんにしょうかなあ。。。 Interested in ... Gadget / Business / Piano / Scial / Organization / Novel / Management / Travel / Money / Books / Design / Furniture / Supermarket / Camera / iOS /

年収700万円の仕事なんて、中学生でもできる。

大学を卒業し一流企業に就職。若手といわれる20代こそ月並な給与に甘んじていたものの、中堅といわれる30代前半、そして主軸打者へと成長する30代後半を迎えるビジネスマン達は、収入も同い年の友人よりはそこそこ多く、自分の仕事には自分なりの哲学を持ち、処世術を身につけ、専門性の中に一般的な法則や流れを見つけおおよそ社会の仕組みというものを理解できてくる頃である。

金融や商社、マスコミなどやや特殊な職場でない限りは、一流企業の30代という年齢は、年収400万円台、500万円台、600万円台、700万円台、この全てを経験する事などざらである。営業職など職種・報酬様式によっては800万から1000万円ほどの正規報酬を得る人も決して珍しくはない年代だが、結婚・出産と養う家族も増えて、ワーク・ライフ・バランスに頭を悩ませる年代でもある。

まず、こういう無数のサラリーマンに言いたい。今日もお仕事お疲れ様です、と。明日もお仕事頑張ってください、と。家族があなたの稼ぐお給料を今か今かと待っていますよ、と。夫として、父として、あるいは母として、妻として、家族としての一員にふさわしい振る舞いを自然体で行うあなた達を、僕は尊敬しています。

…一方で。

こういう人達はたいてい、頭の何処かで仕事に物足りなさを感じてたりするのを知っている。上司がこうでなければもっと成果を出せるのに、とか、俺もクソどもが開発した使えない自社製品なんかじゃなくA社の製品を売りたい、だとか、いつもいつも同じ仕事ばかりでたまには違う仕事がしてみたい、だとか。

 

後は外回りは夏は熱くて冬は寒いから内勤がいいとか、内勤は顔ぶれがずっと同じでいい加減飽々したから外回りがしたいだとか、いろんな会社のいろんな人と話をしたが、みんな似たり寄ったりの芋版で押したような不平不満を飲み込んで、あるいは運命を受け入れて働いている。

頭の片隅では、彼らはわかっている。今自分たちがやっている仕事は、ちょっと頭の切れる中学生を連れてきて同じ期間教育すれば、きっと同じくらいの仕事はできるだろうという事。会議に出るための資料作り、営業先へのトーク術、上司の付き合い、お金の管理、人の管理、進捗管理、etc。いつもいつも繰り返されるルーチンワークにゲンナリして、今日のタイトルのような事を言うサラリーマンを僕はたくさん見てきた。

事実だと思う。

事実、大企業の多くの社員は、優秀な中学生で十分代替できるような仕事を、家族の命を背負って毎日毎日こなしているように思う。

厳然たる、事実。

 

しかしだから悪いというのではない。この事実は2点の素晴らしい他の事実が前提となる。

 

1.会社はそれで回るという事実

大企業ほど、個人の個性を殺し型にはめて予定通りに予定通りのことをする事を求めるし、それができる人が評価される。よく、歯車の歯だとかなんとか言われるが、これは全然悪いことではなく、むしろとても素晴らしい事なのだ。それが例え金儲けに繋がっていなくても、金儲けを行う部署の人たちを最も効率的に動かし、最も無駄なく経費を抑えるという仕組みの一つなのである。

そういう仕組は一朝一夕で作られるものではない。とても賢い人たちが、多くの家族同様の社員たちとともに、無限にも思える長い長い時間をかけて作り上げてきたまさに人類の集合知のかけらとも言えるものであり、効率的で時に美しくさえ映る事がある。そんな美しい仕組みにただ乗っかるだけで数百万円の富を手にする、これは労働者として極上の幸せとも言える。会社が回るという事実が、全ての歯車の歯の存在事由である事に、歯車自身は気づいていない事が多い。

 

2.中学生でできない仕事はもっともっと楽しいという事実

中学生でできない仕事も、もちろんたくさんある。いわゆる課長次長レベルになると、業務上の数字を追う以外にも人々のマネジメントという領域に脚を突っ込む事になる。今まで一緒に働いてきた仲間の給与情報や家族情報がいきなり手元に入ってきて、裁量の及ぶ範囲で彼らを好きに扱う事ができるようになる。きっと、それまでの苦労を10としたら30くらいの苦労を背負い込む事になるのだろうが、反面、社会のダイナミズムというのをこれでもかと味わう事になるだろう。辛いことも増えるが、仲間と喜びをわかちあう事も増えるだろう。

もう少し上のレイヤーで言えば、顧客がどうとか部下の給与がどうとかという些事などではなく、一企業の舵取りを担うメンバーとして活躍するチャンスもある。今後どの事業に注力しどの事業を切り捨てるのか、またはどのあたりの領域に新しく挑戦していくか、そしてそれはどういうスケジュール感でやっていくか、など、いわゆる経営陣という奴も、年収700万円の世界よりは遥かに楽しい。先ほどの苦労の尺度でいうと、一気に80くらいまで背負い込む事になるだろうが、無論良い結果を残せば報酬という形で明確にお金が手に入るし、自分の決断やコメントが雑誌や新聞に取り上げられ、色々な人に噂されるようになる事で影響力を感じる事も多くなるだろう。毎朝毎朝、社員数千人とその家族の命を背負って背広を着こむ時に、えも言われぬ力が湧いてくるのを感じる事ができるだろう。

さらに極論を言えば、ただの歯車が長じて一国の行方を左右するような立場になる事もある。課長から政治家まで、中学生でもできない仕事は、年収700万あたりの中学生でもできるような仕事より飛躍的におもしろくなるしやり甲斐も出てくるし、なにより苦労するようになる。言い換えると、自分を成長させてくれるようになる。

こういう、中学生ではできない仕事をやるためには、他の多くの人達と同じような事を同じようにしていたのでは難しい。

本をよみ、議論し、仲間を増やし、彼らに認められ、趣味でも成果を残し、名を知られ、勉強を重ねて初めて一歩抜きん出る事ができる。頭を必死で使って工夫し、信念を持ち絶対に譲れない一線を見極めてそれを頑固一徹なにがなんでも死守しなければならない。あるいは誰のやったことの無い、見たことのない事に挑戦し成功を収めなければならない。あらゆる事象を一般的、抽象的、時には微に入り細を穿つ程具体的に観察し研究しつくして、自身の思考に取り入れていかなければならない。

なぜなら、中学生はこういう事ができないからである。時間的にも知識的にも金銭的にも、中学生には絶対にできない事でも大人は大した労力もなくこなすことができる。すごいビジネスマンと中学生でもできるような仕事をするサラリーマンの間には、こういった大人でないとできないような事、こなせないような能力をいかに身につけ発揮するかという、高い高い壁がある。

大人になったからには、大人じゃないとできない事をちゃんとやっとかないと楽しくなくないか?

本当に尊敬できるビジネスマンというのは僕にも何人が居るが、彼らは押しなべてビジネス以外でも大きな成果を残している事が多い。とある大銀行の部長(都銀の部長というのは、めちゃめちゃ偉いのです)と飲んだ時には日本画の含蓄について小一時間語られた後に自らの個展のチケットを渡されてたまげたし、めちゃくちゃ仕事ができると評判のコンサルタントは、とても厳しいという評判の、いわゆる「お固い」業界のクライアントからなんとニックネーム+呼び捨てで呼ばれていた。事情を聞いたら、彼がジャズピアノのコンサートを開く時に使っている名前で、クライアントはよく招待されて聴きに行くとの事だった。無論僕も聞きに行き、一発でそのコンサルタントのファンになった。

気力も体力も充実している30台を迎えたばかりの若者達に、中学生でもできるような仕事で満足せずに、是非、楽しい事をたくさんやって、大人ならではのズルもテクもガンガン使って、突き抜けた事をしてほしいなあと考えるのであった。