sametimeme's diary

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奴隷サラリーマンと奴隷起業家

 サラリーマン。会社に所属し役職を名乗り、組織の歯車として1年365日ひたすら頑張って会社の利潤の為に働く、優秀な労働者達の事である。最も、年に百日程度の休日はあるがその多くは二日間なので、一日目に身体を休めて二日目の午前に少し活動したら、もうその日の午後からは月曜日の仕事に備えるモードとなる。まとまった休みはといえば一週間程度の休みが年に一度、それすらもらえない場合もある。

 こう書くと何やら酷い仕事のように思われるが、世の中の多くの人はこのサラリーマンとして社会に参画し、家族を背負い、来る日も来る日も同じ時間に起きて同じ電車に同じ人達と乗り込み、仕事にでかけていくのである。彼らはそれを正しく、幸せな事だと信じる。なぜなら、他人がそうしているからである。会社でのささいな成功や、家庭での何気ない一コマに幸せややり甲斐を感じ、日常の中でいつのまにか歳を取るのである。

 ---これは、まるで奴隷ではないか。資本主義の、資本家の、まさに手先として、走狗として、親から貰った大事な人生を他人の為に捧げている訳である。人間の尊厳の否定である。馬鹿な大人たちは気づかない、自分は他人と違う、誰がサラリーマンなんかになるものか---。

 そう思う人には、是非とも起業をおすすめしたい。

起業はダイナミックで刺激的である。収益が自分の月収に直結し、自分の思い通りに好きなように仕事が出来る。毎日決まった時間に働かなくても良いし、経費で南国リゾートに会議という名目で遊びに行くことだってできる。付き合う連中も経営者ばかりで、一気に交友関係が華々しくなる。

 起業なんてと思うかもしれないが、起業なんて簡単である。家の中のものを適当に見渡し、半径1m以内で自分に持ち上げられそうな物を持ち上げてみよう。持ち上げたらそのままiPhoneで写真を撮って、どこかのネットショップサービスでアカウントを作ったらそこに写真をUploadして値段をつければ、起業、すなわち事業を起こしたのである。

 文字にして4行。時間にして30分ほどで起業完了。

 法人登記?資本金?そんなものは必要ない。個人事業開業届なんてコンビニの帰りにでも出せば良い。確定申告?その時が来たらググればいくらでも情報が出てくるので、全く心配しなくてよい。

 そうこうしてるうちに、ほら、どこかの物好きがあなたのサイトにアクセスして物を買ってしまった。さあ大変だ。注文メールが届いたものの、返信メールを1から打つのも大変なので、テンプレ文章をネットで探してこよう。ついでに、約定なんかもどこかから適当にパクればよい。あ、お金ってどうやって受け渡しするんだっけ?これも、ググってPaypalなりの決済サービスアカウントを作ればそれでおしまい。そんな事しなくても、ネットから請求書のフォーマットをダウンロードして、記入したものをメールすれば、なんと相手はその内容に応じて自分の口座に金を振り込んでくれるのである。

 さあ次はなんだ。振込確認を知らせ、納品書を作成する。納品書と商品を一緒に発送するためにパッキングするのだがこれが意外とめんどくさい。パッキングが終わったら終わったでコンビニに持ち込むのも面倒くさい。そこで適当にググればどうやら集荷サービスがあるようなので、電話一本で宅配のお兄さんが家に荷物を届けに来てくれた。

 これで引き渡してようやく完了…ではない。ちゃんと物が届いたのを確認し、初期不良や破損が無いかを見てもらってようやく、1つの取引が完了、なのである。

 この取引をいかに多く行うか。いかに取引あたりの利益を最大かするか。いかにコストを抑えるか。この3つを必死で考え続けていくのがすなわち、経営というやつなのである。

 売るものはなんでも良い。身近な灰皿でも、田舎の祖母が作ったおかずでも、知り合いが書いた絵でも、他人の趣味を適当にレビューした文章でも、なんなら、適当に空を撮り続けた写真データでもよい。自分の身体のあらゆる部分を、あらゆる角度から、あらゆるポーズで10万枚くらい写真に収めたら、きっといろんな人から欲しがられる。あとは、お金。例えば、ユニクロ行く途中に銀行に寄って、適当な金額の円をドルに帰る。家に帰ってそのドルをいくらかの付加価値をつけて売りだしたとすれば、それはそれで欲しがる人も出てくる訳である。

 …とまあ、怠惰な週末で起業も経営も体験可能である。起業家すなわち、社長である。あなたは今、代表取締役社長だ。一国一城の主、資本家だ。さあ、思う存分労働者をこき使おう。

 というわけで、労働者を募集する。請求書を送る人、商品を箱詰めする人、お金を計算する人、商品を集めてくる人、商品情報をアップロードしてくれる人、宅配業者に発送を依頼してくれう人。さあ集まった。でも、思うように動いてくれない。なんでだ?自分は社長で偉いはずなのに、奴隷のはずの労働者がうまく動いてくれない。仕方ないので、自分が必死で教え方を考えて仕事を教え、それを確実にやらせる羽目になる。

 自分だけでやってられないので、そういう役目をしてくれる人をまた雇う。そろそろ人を雇うのにも疲れてきたので、人を雇う人も雇おう。社員がどんどん増えて大変になった。社員を取りまとめる人を作って、代わりに色々と指示してもらおう。

 …ますます思い通りに動いてくれない。それどころか、みんなで勝手に盛り上がって、明らかにマズい方向に会社が向いてしまってる。ちゃんとこうやってああやって、こうしてね。とお願いしても、わかったような顔をするだけで全然行動に反映されない。困った。

 仕方ないから毎朝労働者より早く出社し、労働者の働きに目を光らせて、労働者より遅く帰る。色々と労働者の顔色を伺いながら、なだめ、すかし、嘆願に近いお願いをしてやっと期待してた半分くらいの働きをしてくれるようになった。良かったよかった。

 たまの休みの日には起業仲間とゴルフである。ゴルフ場でも話題は経営の悩みや相談。営業トークとかトップセールスなんて元気のいい事をする気力なぞなく、ほかの経営者も同じように従業員たちの顔色を伺いながら会社を経営していると知って、安堵する。しくじれば、社員とその家族が生活を失う。嫌になれば転職すればおしまいの労働者なんかよりよほどよほど、太く重い鎖が脚に巻き付いているのを感じるのだった。

…、、て あれ?

 奴隷的サラリーマン生活を送るのが嫌な人に、起業を薦めたはずだったが・・・まあいいか。奴隷起業家も、悪くないじゃないか。