sametimeme's diary

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ヒステリーの帰着点

やりすぎである。

異国の地タイで、またも政治的リスクが顔をのぞかせた。

バンコクでは現政権に対する反対運動が高まり、連日数万人規模のデモが報道機関で大々的に取り上げられている。元々はクーデターで国を追われたかつての宰相を呼び戻すための法案の取り下げを要求するデモから始まったはずだったが、今やすっかり目的は入れ替わり現政権打倒というヒステリックなものになってしまっている。

熱に浮かされるのは良い。自分の贔屓にする政治的主張を多くの人に聞いて欲しいのもまあ分かる。だが、子供ですら考えて分かるような事、行動の第一原則であるべき『他人に迷惑をかけない』を全くもって無視するような行き過ぎたデモ行為が声高に叫び撒き散らすものは、政治的な主張ではなくタイ人達の教養と度量の限界に他ならない。

今日のデモで、警官隊との小競り合いでついに死者が出たという。定かではないが、学生だったという報道もある。タイの政治にはあまり明るくないが、ざっと調べた感じだと今の政権には一般人が生死をかけて引きずり下ろすような極悪なものではない。チベットを弾圧する中国への焼身自殺のような悲愴なものは感じない。感じるのはただ、ヒステリー、である。

日本人的な感覚でしばし理解できないのは、外国人のヒステリーである。無論、日本でも多少のヒステリーは存在するし男女問わず我慢できない人はできないものだが、多くの外国では、ヒステリーは日本ほど禁忌なものとされず、時には賞賛すらされる事がある。中国や東南アジアは顕著だとよく言われるが、個人的にはアメリカでも日本に比べればはるかに多くのヒステリーを目の当たりにする。

ビジネスだろうが友人関係だろうが、この種のヒステリーを想定し、対応に慣れておかないと、場に飲まれ、後手に回り、無理が通って通りがすっこむというような羽目に陥る。あっけにとられ口先も手先も動けなくなる日本人が殆どであろう。海外帰りで挫折を味わった日本人の中には、こういった感情の発露にどうしても馴染めなかった人も多く居ることだろう。

翻ってタイでは今デモをしている側もされている側も、これまでヒステリーとそれに伴う暴力や迷惑をお互いぶつけあってきたという過去がある。やられる前にやり返せと、日を追うごとに政治的運動は加熱し、先鋭化し、常に最悪かそれに近い事態に収束するのである。

今回、このヒステリーの帰着点として、学生が一人命を落とした。19歳のタイ人学生が、デモ反対派の銃撃に倒れたのだ。名目上、このデモ反対派というのは現在の政権の支持者となる。既に政府は官公庁がデモ隊に占拠される事を黙認しているかのような状況であり、今回のヒステリーは結果として政権に大きなダメージを与える事となった。

民主主義国家として、選挙で選出された首長を国民が否定するというのは、ある意味ルール違反である。が、政権側は強権を振りかざし権力の維持と伸長に汲々とするというのもまた、民主主義を虚仮にしかねない行為である。タイでは民主主義が根付かないと言われている所以であるが、こうなってくると、話を収められるのは国王しか居ない。が、高齢で病気がちの国王がどれだけ上手くこの状況をコントロールできるのか、多くの人は疑問を感じているだろう。おそらく、情報の入手すら困難な状況にあるのではないだろうか。


…他国の政治は、見ていてとても興味深い。自分と異なる感情をもった人たちが、自分と異なる根拠を元に自分と異なる論理を考え、信じられないような行動に結びつく。ヒステリーの帰着点として学生一人の死はあまりにも大きすぎたと僕は考える者だが、彼の血もまた前回の政治的騒乱で命を落とした百名近い人々と同じく、タイという国の今後の発展と成功の礎となるべく、土へと還っていったのだと信じたい。